
私の仕事は、クライアントの悩みや課題を解決すること。
だから、継続サポート中のクライアントはもちろん、メルマガ読者からも、週4日勤務している会社の人からも、色んな悩みや問題を聞くのだけれど。
時々、その問題って解決する必要ある?
と思うことがあるのです。
それは別に「くだらない」とか「そんなことで悩むな」とか言う話じゃありません。
そうではなくって、「無理して解決しようとしなくても、他の方法があるんじゃない?」ということです。
あるいは、「いやいや、解決しなくちゃいけないのって、そこじゃないよね?」ということ。
物事を真正面しか見ないから、「これを解決しなくちゃいけない!」と視野が狭くなっているだけであって、横から見たり斜めから見たり、はたまた、ちょっと遠くから離れて見てみたり。
そんなことをしてみたら、別に解決しなくても問題ないってこと、よくあるんですよ。
それは本当に解決しなければいけない問題なの?
ハーバード・ビジネス・レビューの2018年2月号にこんな記事が載っていました。
次のような状況を想像してみよう。あなたはオフィスビルの所有者で、テナントらがエレベーターについて苦情を訴えている。古くてのろく、待ち時間が長いというのだ。問題が解決されなければ中途解約して出て行くと、脅かすテナントも何軒か現れた。
どうすべきかと尋ねられると、ほとんどの人は即座にいくつかの解決策を出す。エレベーターを取り替える。強力なモーターに交換する、あるいは、エレベーターを動かすアルゴリズムをアップグレードしたらよいかもしれない、といった具合だ。
(中略)
ところが、ビルの管理会社に問題を説明したところ、もっと鮮やかな解決策が示された。「エレベーターの横に鏡を取り付けなさい」と。
(中略)
鏡というソリューションは、実に興味深い。これは、テナントから苦情として訴えられた問題の解決策ではないからだ。鏡を置いてもエレベーターは速くならない。その代わりに指し示しているのは、問題の理解を変えなさいということである。
当初の問題の枠組みが、必ずしも間違っていたわけではない点には留意してほしい。新しいエレベーターを設置すれば、おそらく物事はうまくいくだろう。リフレーミングの重要なポイントは、「真の問題」を見出すことではない。解決すべきよりよい問題がないかを探ることなのだ。
ハーバード・ビジネス・レビュー2018年2月号 「そもそも解決すベきは本当にその問題なのか」より
エレベーターが遅くて待ち時間が長いのが不満
この問題に対して、解決策を出しなさいと言われたら、多くの場合、「どうやったらエレベーターを早くできるか」「どうしたら、待ち時間を短縮できるか」と考えます。
でも、解決する問題を「エレベータがの待ち時間が長いこと」ではなくて、「エレベーターの待ち時間を気にしなくなること」に変えたことで、解決策がガラリと変わったわけです。
待ち時間が長い→イライラする→苦情を言う
だったら、イライラさせなければいいんじゃない?という発想ですね。
これって、個人の悩みにおいても、あてはまると思いませんか?
それを解決して得たい結果は何?
先日、クライアントとセッションをしている時、こんな悩みを聞きました。
「もっとコミュニケーションを取って欲しいと言われるけれど、仕事以外の話をすることが苦手です」
クライアントの職場は、多くの人が仕事以外のプライベートな話も積極的に周りに開示しているそうです。
でも、私のクライアントは、それが得意ではなかった。
私も職場でプライベートな話をすることが苦手だし、ほとんど話さないので、気持ちはとてもよく分かります。
その結果、上司から「もっと積極的に周りに溶け込んで欲しい」と言われてしまったんですね。
そうするとますます悩むわけです。
「仕事以外の話をするのは苦手なのに、何を話せばいいんだろう。」
「どこまで話せば、溶け込んだと思ってもらえるんだろう。」
「仕事に支障はないのに、どうしてこれ以上話さないといけないんだろう。」
もちろん、「私は仕事以外の話は一切したくありません!」と突っぱねることもできます。
でも、それって賢いやり方なのかな?と思うのです。
その職場に長くいるつもりはないし、どんな評価をされようが、全然関係ないと割り切るなら、それでもいいかもしれません。
だけど、私のクライアントはすぐに転職するつもりもないし、その職場で頑張りたい、もっと責任ある仕事を任されたいと思っているわけだから、わざわざ人間関係を悪化させる方法を取るのは得策じゃないですよね。
だから、どうやって話せばいいのか、何をどれぐらい話せばいいのか・・と悩んでいたわけですが、そもそも、解決すべき問題って、そこなんでしょうか?
私は違うと思ったので、こんな風に聞きました。
「仕事以外の話をすることが、求められていることなの?」
クライアントの答えはこうです。
「私が職場に馴染んでいないように見えるんだと思います」
実際に馴染んでいないわけではないようですが、上司にはそう見えるらしく、事あるごとに言われるんだそうです。
ということは、クライアントが欲しい結果は「職場に馴染んでいるように見える」ことですよね。
だったら、仕事以外の話をどうやってするか、どれぐらいするかを考えるよりも、職場に馴染んでいるように見えるにはどうしたらいいか?を考えた方が、ずっと良いですよね。
無理せず、自分が解決できる方法は何か?を考えてみる
クライアントの職場は、仕事の話もそうでない話も、とにかく皆でシェアし合うんだそうです。
元々たくさん話しをする方ではなくて、それに加えて仕事以外の話をするのが好きではないクライアントは、極力何も言わずに黙っていて、聞かれたら答えていたそうですが、
それが「コミュニケーションを積極的に取らない=職場に馴染んでいない」
と思われていたんですね。
でも、話をすることが得意じゃない人が、話し好きな人に混じって話すって、かなり難易度高いです。
それも、自分がしたくないプライベートの話も含まれるとなると、さらに難易度があがります。
私のクライアントも、それが出来ずにずーっと悩んでいたわけで・・・
でも、コミュニケーションって話をするだけじゃないですよね。
双方向のやり取りなんだから、「聞く」人がいないと成り立たないわけです。
そして、多くの場合、人は自分の話を聞いてもらいたいもの。
特にクライアントの職場のように、皆で色んな話をするのが好きなら、話し好きが多いのは想像つきそうですね。
話が苦手なら、『聞く』スキルをあげればいいんです。
ただ、黙って聞くだけじゃなくて、相手に質問すれば一石二鳥。
だって質問するということは、『話す』ということだからね。
双方向でのやり取りがスムーズにできれば、「職場に馴染んでいない」ようには見えないはずです。
自分の話をすることは苦手だけれど、人の話を聞くことは苦ではないと言うクライアント。
『聞く』スキルを上げるための具体的な方法をいくつか伝えて、次回までにそれにチャレンジしてみることになりました。
もしもクライアントが、話をすることにこだわり続けたら、解決のきっかけは、なかなか掴めなかったはず。
でも、視点をちょっとずらすことで、「自分が話をしなくても、課題を解決する方法」を見つけたわけです。
ずっと解決したいと思っているのに、なかなか解決できない問題があるなら
本当に解決すべき問題はそれなの?
他のことを解決することで、その問題を解消することはできない?
視点を変えてみることで、思わぬ発見があるかもしれませんよ。
一人で考えていると、なかなかうまくは出来ないかもしれません。そんな時は、ぜひ相談にいらしてくださいね。