
コーチングって相変わらず人気ですね。
Facebookを見ていると「◯◯コーチ」と名乗っている人がものすごく多いし、相変わらず、コーチングを受けたい人よりもコーチになりたい人の方が多いようです。
個人起業の世界だけじゃなくて、組織の中でもコーチングは大人気。
人材開発や組織開発のひとつとして、コーチングを取り入れている大企業は多いです。
コーチング会社に話を聞いても、大企業を中心に引き合いが多くて、とにかく忙しいそうです。
「えっ、まだコーチングやってないの?」みたいな感じですね。
私も仕事上、必要に迫られて、今年はシステムコーチングかエグゼクティブコーチングの勉強を始めようかと思ってます。
でも、何度目かのコーチングブームの中、「これって危険な風潮じゃない?」って感じることがあるのです。
それは、コーチングを魔法の杖か伝家の宝刀だと思っている人が多いってこと。
コーチングを始めれば、問題は全て解決するかのように思っている人、ビックリするほど多い。
コーチングを導入しようとしている側だけでなく、コーチの立場にある人ですら、そう思っているから厄介。
コーチングは魔法の杖でもなければ、伝家の宝刀でもありません。
単なるコミュニケーション手段のひとつでしかないってことを忘れると、問題が解決するどころか、悪化する可能性だってあるんですよ。
コーチングは、相手に「気付き」を与えるコミュニケーション手法のひとつ
どうして今、企業の中でこれだけコーチングが持て囃されているかと言えば、昔からのマネジメント手法が通用しなくなったからですよね。
この記事でも書きましたが、もう「俺についてこい!」的なパワーマネジメントは通用しません。
パワーマネジメントが効果的だった時は、上司が部下に対して「こうしろ、ああしろ」と指示を出せば良かったし、部下も上司を見て育つことが可能だった。
でも、残念ながら今はそういう時代じゃない。
それに「ああしろ、こうしろ」と指示だけされて育って来た人は、今さら「自分で考えて」なんて言われても、考えることすら出来ません。
だから、こぞってコーチング手法を取り入れようとしているわけです。
コーチングは、相手の話を傾聴し、承認しながら効果的な質問をし、相手の自発的な行動を促す手法。
「ああしろ、こうしろ」を止めて、部下本人に考えさせる方向へ舵を切ったというわけです。
使い方によっては、問題を解決するどころか、問題をこじらすことだってある
コーチングは、基本的にコーチが答えを提供することはありません。
「コーチがアドバイスをしたり、答えを提供するのは、コーチとしての倫理違反」とハッキリ口にする方もいらっしゃいます。
確かに自分で考えること、自分で答えを導き出すことはとても大事。
考えられない人が「主体的」に行動することはできないし、「主体的」に行動できない人は、どこかで成長が止まります。
でも、どんな問題もコーチングで解決できると思ったら大間違いです。
例えば、知識や経験がない人に、いくらコーチングをしても効果はありません。
なぜなら、そもそも何をどうやって考えて良いかすら分からないから。
この人に必要なのは、コーチングじゃありません。ティーチングです。
どうやってやるのか、どう考えれば良いのかをきちんと教えて、まずは知識と経験を身につけてもらうことですね。
例えば、評価を伝える時や何か大きなミスをした時。
まず必要なのは、コーチングではなくフィードバックです。
きちんと事実を伝えることが大事ってことです。
コーチングを使うならば、最初に事実を伝えた上で、「これからどうするか?」を考える時。
フィードバックがないままコーチングをしたところで、相手の自主的な行動が改善に繋がらなければ、何の意味もありません。
何も教えず、何もフィードバックもせず、ただコーチングだけでコミュニケーションを取ろうとしても、成長は期待できません。
成長が期待できないどころか、不信感を招くし、問題をこじらすだけじゃないのかな。
全てを解決できる万能な手法なんてあるわけない
ティーチングやフィードバックを悪いことのように言う人もいるけれど、それこそ危ないと思う。
ティーチングもフィードバックも、人材育成には必要です。
だいたい、コーチングもティーチングもフィードバックも手法のひとつでしかないんです。
全ての問題を解決できる、万能な手法なんてひとつもありません。
確かに今まで、日本の組織では自主的な行動を促す「コーチング」のような働きかけが、著しく欠けていたのよね。
だから、コーチングを取り入れるって、すごく大事なことだと思います。
でも、それだけに偏るのって、本当におかしいのです。
もし、「コーチングこそが、唯一素晴らしい」というコーチやコーチング会社に出会ったら、残念ながら二流以下です。
そんな人たちと契約を結んだところで、思ったような効果は得られませんよ。
本物のコーチやコーチング会社は、コーチングのメリットもデメリットもどちらも熟知しています。
だから、決して「コーチングこそが正解」なんて言いません。
ティーチングやフィードバックも必要であるということを伝えてくれるし、コーチングの限界についても率直に話をしてくれます。
その上で、コーチング手法を使うメリットを話してくれます。
コーチングは、数多ある人材育成のひとつの手法でしかありません。
コーチングを導入すれば、全ての問題が解決する。コーチングは伝家の宝刀だと思っているなら、その考えかたは今すぐ捨ててください。
コーチングに限らず、ある手法が全てを解決することなんて、絶対にありません。
解決したい課題に応じた手法を取らないと、問題はこじれる一方。
- 問題の本質は何か?
- その問題はどうすれば解決できるのか?
- 最適な手法は何か?
これらを考える手間を惜しんではいけないし、ベンダーの言いなりになっても、うまくはいきませんよ。
それこそ自分たちで考えて気づいて、自発的に行動しないとね。